図書館列車シリーズ 空想旅行記

『夜の図書館駅と、オリバーのランプティー』~空想の午後に読む旅の話~第二話

夜の静寂に灯る読書ランプ。図書館列車が止まるのは、夢と記憶をつなぐ駅──

——ガタン、ゴトン。ガタン、ゴトン。

その音に目を覚ましたとき、車窓の外には静かな夜の景色が広がっていた。

「ご主人様、もうすぐ“夜の図書館駅”に到着いたします」

小さな読書ランプを灯しながら、猫の執事オリバーが紅茶の香りとともに知らせてくれた。

ランプの光に照らされた本棚には、夢の断片や過去の記憶が並んでいる。
ふと手に取った本には、見たことのない自分の物語が綴られていた。

「この駅では、読むべき本が読者を選ぶのです」
オリバーはそう言って、銀のティーポットから静かにランプティーを注いだ。

“今夜の一冊”を開いたとき、不思議な文字が光り始めた──。

ページをめくるたび、見覚えのない景色が広がる。

懐かしさと未知が混ざり合った文字の海。

「これは…わたしがまだ知らない、わたしの思い出?」

不意に、どこかで猫の足音が聞こえた。
駅のホームに降りると、小さな猫たちが本のかけらをくわえて集まっている。

「この子たちは“記憶の仕立屋”でございます」
オリバーが微笑みながら、ランプを掲げた。

本の破片をつなぎ合わせて、新しい物語が紡がれていく。

やがてその中心に現れたのは、幼いころ好きだった“ひみつの本棚”。
もう忘れかけていた、でも確かにそこにあった大切な時間──。

「ご主人様、今宵の駅は、心の奥にある“読まれずにいた物語”の停車場なのです」

列車が静かに汽笛を鳴らす。
再び走り出す車内で、温かなランプティーをひとくち。

カップの中に揺れる光が、記憶とともに、また一つの物語を照らし出していた──。

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